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 昔々、ある村に少女がいました。
 父親は早くに死んでしまい、少女は母親と二人きりで暮らしていました。決して裕福ではないけれど、とても穏やかで平和な毎日。
 けれども、それは長く続きませんでした。
 少女は極々普通の女の子でしたが、ただ一つ、普通でないことがありました。――少女は、カラスと言葉を交せたのです。
 カラスは不幸の象徴。死や悪病を予知する不吉な鳥とされていました。
 少女はそんなことを知りません。ですが、それを知った人々は、
「悪魔にとり憑かれている……」
 そう噂しました。
 人から人へ伝わるたび、少女の噂はどんどん大きく膨れていきました。
「人を呪っている」
「災いを呼ぶ」
「あの人の病はあの子のせいだ」
「今年の不作もあの子のせいだ」
「あの子は化け物だ」
「あれは魔物の子だ」
 そうして村中に広がる頃には、村人はもちろん、母親すらも少女を恐れるようになり、誰も少女に近寄ろうとしなくなりました。

 いつしか、少女のそばにはカラスだけしか、いなくなってしまいました。
 誰にも愛されず、誰にも必要とされず……居場所を失くした少女は、ただ光を失った世界で存在するだけでした。
 可哀想なカラスの子。
 幸せなど、彼女には訪れそうにもありませんでした。